目の前にある簾の向こうになにがあるのかを 簾の前で見えていることをことばにしながら伝えるのは難しい・・・。 目に見えるものが総てという風潮、でも希望がもてる。心は取り出して見られるモノではないけれど皆それぞれがそれを痛いほどに感じている。「ここ…

無限のあわいに 鈴虫

8月で、東京での源氏物語連続語り会は8年目に突入します。 初回は8年前の8月8日、∞/∞無限の企画と思われたこの会も、皆様のお支えのお陰で43回会をかさね、第三十八帖に届きました。 8月は「鈴虫」の巻。 静かな静かなこの巻で交わされる言葉の向こうから黄…

京都五十四帖語り会

2016年1月 いよいよ京都での五十四帖連続語り会がはじまりました。 せっかく物語が生まれた地で語るのだから と、巻ごとに物語にちなんだ場や相応しい空間で開催することに致しました。お越し下さる方が物語だけでなくその世界全体を味わっていただけること…

光のなかから現れ出る闇

源氏物語連続語り会は7年目をむかえ、昨年暮れに壮大な「若菜」上下巻を語り終えました。 さまざまの出来事があり、ブログも停滞していましたが、源氏物語を語るなかに人生における気づきもまた様々戴きました。目前に迫った語り会「柏木」の巻 「柏木」という人…

日本 ゆらぎの感覚

「明日の京都プラットフォーム」無事終了しました。今回のテーマは 「日本の美 手と技の世界」 無形の文化をどのように遺産とするのか この中で「桐壺」の巻をお聴き頂きました。 500名のお客様が しん・・・・ とお耳を傾けてくださいました。無形文化は有形の…

若菜の狂気をくぐって

「若菜下」 その三回目は特別に恐ろしい段でした。六条御息所の死霊が紫上の息を止め、恨みを抱いて苦しむ我が身の哀れを源氏に訴える間に、六条院では柏木がこちらは生きた物の怪のように女三宮に密通、懐妊、取り返しのつかない事態に女三宮はなすすべもな…

人形浄瑠璃ヌーベルバーグ

源氏物語をしばし離れて、文樂人形芝居とのコラボレーションで郡上大和におりました。 文楽界から独立、木偶舎を立ち上げ人形浄瑠璃ヌーベルバーグと称して新しい作品を次々と創作される勘緑さんと、作曲家住友紀人さんのユニットに加えていただき、浄瑠璃節…

一年がすぎました

実に一年ぶりの更新です。 昨年夏、スイス、イタリアから戻りまもなく父を看取りました。 日本での仕事も終え、やっと今晩は一緒に食事をしよう、と実家に行ったその夜の入院。それからわずか一週間、あっというまに旅立ちました。 まるで待っていてくれたか…

スイス、リヒテンシュタイン6都市公演を終えて

今年はスイス、日本両国の国交樹立150周年、記念事業の一環でスイス、リヒテンシュタイン6都市にお招き頂き、沢山の方に源氏物語をお聴き頂けました。6月17日に出発、ジュネーヴ、バーゼルランド、ルツェルン、ウリ、リヒテンシュタイン、ルガーノを巡り…

おぎゃあ

呼吸 声になる前の生への渇望。私達、産道を通ってくるときに最初の試練をくぐり抜けるのですね。 生きたい と思う力が最大限に発揮されるのがまだなにも外からの学習をしない時 胎児が赤ちゃんになるとき。お母さんとの命懸けの共同作業。 赤ちゃんってすご…

東京から京都に 

この春拠点を東京から京都に移しました。 ちょっと思い切りが必要でした。長く東京に住んでネットワークを育ててきましたから。 でも京ことばで活動してゆくこれからのことを考えるとやはり京都発でなければと決断しました。 何処で語るにしても京都の風を纏…

フランスでの講演が終わりました

パリ文化会館からの招聘を受けて、文化会館とイナルコ大学(国立東洋言語文化研究所)で講演をさせていただきました。 イナルコ大学では日本語を学んでおられる方々にお聴き戴くとあって、「花の宴」の巻を原文を中心に構成、標準語での簡単な説明に続いて原…

物語の作り手は・・・

玉鬘十帖もいよいよ幕となる「真木柱」の巻で今年の連続語り会は始まります。 まずはその前編・・・。幕があくや、これまでかぐや姫を思わせた玉鬘求婚譚に決着がついたと知らされ、私達は面食らいます。どうやらお相手は思いもかけない人物だということがわかっ…

新しい年を迎えて

明けましておめでとうございます。年の瀬はナレーションで仕事納めをさせていただき、いつものように京都にもどり、大好きな御寺で除夜の鐘を突かせていただきその足で下鴨神社へ初詣。 昨年の秋は文楽人形芝居との共演、絵画作品とのコラボレーション、また…

Sad Song

ルー・リードがなくなった。私にとっては ことだまの歌い手。 音符に従うのでなく 彷徨するように 言葉が求めている音を問うように 音を紡ぐ人。どんなに堅牢な理屈も人の心は動かせない 心に直にふれてくる 揺らめくような生命感 それが人に力の源にある光…

理屈じゃないのよ京ことばは

句読点。読点これはくせ者です。 台本などにふってある読点は、読み解くためにふってあると理解し、 声にするときにはあえて無視したり、また読点のないところで息を入れることがあります。 そのことが命を吹き込むのに求められると思うときには。 源氏物語…

彼岸の花 遠くの私

天に手をさしのべる彼岸花は 降りてくる魂を受けとめようとしてるみたい 異名を数持つこの花に名前をあげるとしたら 千手花お盆は各お家に戻ってくるおしょらいさん 秋の彼岸の間はこの花に宿をとるようで お彼岸過ぎてこの花は灰がちの炭が白く燃えるみたい…

此岸の目 彼岸の目 兆しの風

八月がまた巡ってきました。五年目に入った連続語り会。 『野分』の巻はこれまでと少し違った感覚になる巻でした。 源氏の子息 夕霧中将が、野分の風見舞いで巡る六条院御殿。 垣間見てしまった父源氏の最愛のひと 紫の上の美しさ。 親子とも思えない程の玉…

あの山の向こう 生の彼岸に

「常夏」「篝火」の語り会が無事終わりました。 ちょうど五十四帖の折り返しの帖が夏至の日とかさなって この四年間を少し振り返ってみました。中井和子先生が遺して下さった美しい京ことばによる源氏物語を 一語残らず声にしようと 無謀にもはじめたこの企…

常夏 なでしこ いとし子 山猿・・・!

四年目にして、源氏物語連続語り会は五十四帖の折り返し点です。 お支えありがとうございます。物語は折り返しにふさわしく(?)源氏の息子達の代がいよいよその個性を発揮しだします。 玉鬘十帖も盛り上がって来、常夏の巻と、篝火の巻が控えています。源…

ことばに宿っているものを

ことばが宿している魂 魂 という漢字はエネルギーの塊のような印象だけど たましい と声にするととたんにやわらかく浮遊しはじめるようです。漢字を見て感じるそれと、声にした時に動きだすそれ。 そしてそれを声にするときには 大元は同じでも色合いや質感…

ことばにすること 

「源氏物語〜かさねる心」 初めての長い講演をさせていただきました。源氏物語を語る中で自身のテーマとしている「かさね」のさまざまを 物語の大きな流れとともに そして後に伝えられていったかさねの表現に繋いで 私達が生きる中でかさねとはどういうもの…

撫でし子の 父 母のかさね

常夏はなでしこの花の異名。なでしこは撫でて愛しむ子の意。 頭中将(現内大臣)にとって亡き夕顔の遺児玉鬘が常夏。 源氏大臣がひきとったという姫こそがわが娘と知らずになでしこの姫を探す内大臣は、 落胤の姫 近江の君を迎え入れます。 が。 が!・・・なの…

あはひの物語

源氏物語は王朝の恋愛物語ではなく あの世とこの世のあはひ 境の物語だと思います。朝顔の巻では、朝顔の姫宮に恋情を訴え退けられた源氏が その後紫の上に ずっと胸に秘めていた亡き藤壺のことを語ります。 そのことだまに震えた藤壺の魂が夜半雪の庭に降り…

京都有隣館 春秋の誉れ

4月21日、京都東山の私設美術館の草分け「有隣館」で「胡蝶」の巻を語りました。 女房語りの活動を支えて下さる京都の方々が企画して下さった語り会です。 現館長様の御祖父様が蒐集なさった美術品の数々が静かに気配を醸し出している館内。 開演までの時間…

闇の気配 蛍の光

螢の巻を語り終えました。沢山のお運び、ありがとうございます。六条院という素晴らしい環境の中、人知れず玉鬘の姫が 源氏の大臣の恋情に困惑を深める巻。火をおこさない限り、夜ともなると月星の他には明かりのなかったかの時代。 王朝人は闇の中、焚きし…

3月の声 残響

昨日は3月の声と称する輪読の会に出席しました。3月にまつわる日記や小説、詩を思い思いに持ち寄って、喫茶店の片隅でひっそりと声を交わしあいました。私は芸もなく源氏物語の花の宴から藤の花の宴を原文で聴いていただきましたが、ステージで語るのとは違…

命を宿すもの

無事二十四帖「胡蝶」の巻を語り終えることが出来ました。有難うざいます。 今回は以前舞台で演出していただいた懐かしい先生に聴いていただけました。 また高校時代のごく短期間ですが一緒にバンド活動などした懐かしい先輩、 ラジオドラマをずっときいて下…

富士子さんの帯

昨年夏 友人うさぎさん(仮名)の御母様が亡くなりました。 母娘で源氏物語が大好き、応援して下さった方でした。名は富士子さん。 乙女の頃の夢は女優になること、でも時代もあって夢は叶いませんでした。 けれど文才のある富士子さんは随筆家として本を何冊…

空とぶものに思いを託して

春が待たれる寒い日に、蝶や小鳥の舞歌う「胡蝶」の巻を思います。 晩春三月、六条院春の御殿で池に龍頭鷁首の舟を浮かべての舟楽が催され 春の御殿の素晴らしさが隈無く描かれます。 翌日はここに里帰りしている秋好中宮による季の御読経があり、 紫の上は…