あまのはしだて

秋の国民文化祭京都 のお仕事の下見で、
与謝蕪村縁の地京都与謝野に来ています。
まだ明るいうちに打ち合わせが終わって、
天橋立までは少し遠いのであきらめ、
ホテル周辺に古い神社があるというので向かっていました。
するとだんだん聞こえてくるガッシャンガッシャンという音。
(機織りの音だ)と判りました。
そう、ここは丹後ちりめんの里なのです。
国道から田んぼの畦道に降りて、お家が並ぶ路地に迷うように入って
機を織る音に導かれ、一件のお家の前でその音を聞いていました。
すると通りがかったご夫婦が、怪訝な顔で「なにしとんなるの?」
これこれと説明すると、にっこり笑って「おいで」と。
機織り工場に「見せてやって」と口をきいて下さいました。

話す声も聞こえないほどに
工場の中はたくさんの機織りが動いていて
奥さんが時々止めては説明をして下さいます。
奥さん担当の機は4台、帯揚げを織っていらっしゃいました。
後で染めるのでしょう、真っ白な細い絹の縦糸がぴんと張られて
ガッシャンガッシャンどんどん鶴やら小花模様が織られていくのです。

ご主人は錦の帯を織っていらっしゃいます。
渋い紫の縦糸に、金や銀、紫の糸が複雑に交差して
正倉院文様が織られていきます。
裏面が上になって巻き取られていくので、
おなじみの袋帯の中はこうなっているんだーと驚きました。
模様として表に出ている部分よりも、裏に渡っている糸の方が多いんです。
贅沢な物だなあと思いました。
素早く美しい手さばきで継いだ糸の処理をされるのを
あかず眺めているうちに真っ暗に暮れてしまったのにも気がつかず。

奥さんは「娘にホテルまで送らせるから。」などと、
こんなにお邪魔してお手間取らせた私に言って下さいましたが、
「大丈夫!!」と、失礼しました。(もう、ちゅーしたい)
・・・とはいったものの、そのお家を出ると、ホテルはむこうに見えるのだけど
真っ暗なたんぼにはばまれ、来た道も判らない!
そう、来たときはあぜ道を抜けたのでした!
しばらく歩いて車の通る道を見つけ、無事ホテルに。

食事をしながら昼間見た海や山、田んぼや川を思い出しました。
この辺りは幼い頃、父が毎年海水浴に連れてきてくれた場所。
この自然、絶対失ってはならないと思いました。
東北の地には、痛みと恐怖にひしがれながらも
生きようとする力をほとばしらせている人たち。

明日は天橋立に行って、天に架かる橋に祈ってこようと思います。
そして私も、非力ながら自分の出来ることをしようと思います。