月のうさぎ

これは良寛様からの贈り物。

今夜は月の暦で中秋の名月
満月がちょうど重なって ふくふくしながら観ています。

お月様にはうさぎがいる

小さい頃 サンタさんの存在よりも確かなことでありました。

我が身を見知らぬ餓えた翁に捧げるウサギの話があります。
古代インドの仏教説話集『ジャータカ物語』に収められた物語。
今昔物語で読まれた方もあるでしょう。
大唐西域記 これは唐僧・玄奘三蔵中央アジアからインドにかけて求法の旅をした記録。
ここにもこのウサギの物語がみられます。

そしてこの物語に感動した良寛さんは
何度もこの物語を書いては遺しました。

餓えた翁に「私を食べて下さい」と
仲良しの友達猿と狐が熾したたき火に飛び込むうさぎ。
その心に打たれた翁(実は帝釈天だったりインドラ神の化身だったり)は
うさぎの亡骸を月の宮に抱いて連れて行きます。

四つの物語は少しずつ違っていて
ジャータカ物語ではウサギが身を投じたのは
インドラ神が心試しのために創った熱くない火で
うさぎはいのち存えました。
いずれにしてもうさぎのその心映えを忘れないように
その姿が月にうつされるのです。

小さい頃、月ではうさぎがお餅つきをしていると思っていましたが
困っている人の為に我が身をなげうつ心を
吾が鏡として空を見上げて映しましょう
というおはなしだったんですね。

この物語を9/19に
群馬赤城山麓 森の中の素敵な「中ノ沢美術館」で朗読します。
良寛さんのいくつかある『月のうさぎ』の中から
一番わかりやすい林甕雄(みかお)の『良寛禅師歌集』のテキストで。

そうしてもう一つは宮沢賢治の『貝の火』。
溺れたひばりの子を助けるためにいとわずに川に飛び込んだ
同じく勇気ある純粋無垢なこうさぎホモイの物語。
こちらはまた、英雄視された人(兎)格が
次第に驕り猛てゆき破滅してしまう様を描きます。
物語は希望を持って終わりますが
月のうさぎとはまた違う意味で
このことを人間は心にとどめて
日々の行いを省みようね というメッセージ。

こんな物語がすでにあっても
人間は大きな間違いをしでかします。
今この物語は、おごれる心が宝を失わせるということ以上に
重要な事柄を指し示しています。

読むのが怖いくらいの物語
語り会にはいろんな方が来て下さいます。
それぞれに問題意識を抱えながら
ひととき 日常とは違う時空に遊びにいらっしゃる方を前に
自分の主義やら思いをぶつけるのはためらわれます。
けれど 物語それ自体が哮る心をもっていて
それを自分の身体を通して語ることで
来て下さった方々と共有出来る何かがきっとあると信じます。

芸術 という言葉を使うのは好まないけれど
人の心を変えるのは
黒と白に分かれて反目しあう行動ではなく
ましてや政治や経済でもなく
言葉を超えた いのちの欲する処にあるのだと思います。

今夜みんなが見上げるまるい月
どんな明日を映し出しているのでしょう

月天の真言

おんせんだらや そわか