光と蔭

12/10 入間市仏子にあるアトリエ空間「アミーゴ」で「夕顔」を語りました。
市の施設ながら、運営は創造力あふれるヤル気満々の入間市民の方々が
何から何までいきいきとこなしていらっしゃる!
大正時代 繊維工業試験場だった建物は
かの昔 糸を紡いだ人達の声が、何処かにこだましているような気がする風情。

目の前に急に明るい光がさして戸惑う夕顔。
その顔は光に輝いて、不安に揺れる心は光る源氏の君に蔓をのばします。
満ちた月を隠す雲 
もののけが近づいているとも知らずに。

昔みた映画 「髪結いの亭主
愛し合う絶頂期に自ら命を絶ってしまうヒロインの気持ちが
若い頃はよくわからなかったけれど
夕顔の死を語っていると、傍目には儚く悲しくても
夕顔本人は一番幸せなのかもしれないと思えます。
愛の証として二条院に引き取られたところで
その後夕顔を待ち受ける苦悩は紫上をみても明らか。

光とは なんでしょう
光る君 とは。

アミーゴから戻って その夜は皆既月食でした。
初めて見る本当の月の姿。
日食は太陽を月が横切るのだからからホントに隠されるのだけど
月食は月が地球の蔭にはいるのだから隠れてしまうわけじゃない。
望遠鏡がないので双眼鏡、それでもよく見えました。
蔭が六割以上になると、月の丸さが見えてきた・・・!
すっかり陰に入った月は肉眼で まったくもって見入ってしまいました。

今まで月は平面でした。盆のような月でした。
蔭を伴っていても、切り取ったような二十三夜の月でした。
でも光を反射しない、橙色に蔭のさすホントの月は
真っ暗な宇宙に浮かんでいる、まさに 玉。珠 球 魂 霊 たまっ 。
そして とても小さいのです。   ぽっちんと  うかんでる。
私の蔭も あの珠にとどいてる。
あれが 月だったんだ

不思議でした。
本当の姿が不思議な気がするのは妙ですが
私たち普段、ものの本当のありさまを、案外みていないんですね。

光る源氏の君も、栄華の頂点六条院で
だんだんとその光を失ってゆきます。
その前に、17,18日はキッド・アイラック・アート・ホールの「絵合せ」の巻。
皆既月食の条件としてはまず満月で ゆうるりと東の山の端から昇って来る。。。
この御前絵合せの光る源氏の君は まさにこれから昇りはじめる月のように
大きく妖しく輝く 満ちた月。

大正時代の建物の、空気の質感を体験したせいかしら
夕顔と 月の光とその本当の姿 そして絵合せの巻が
光の蔭で手を繋いでいるような気がします。

光をもって人を魅了する者はまた闇をも知っているのです。
源氏の出家願望の その心が 
この巻の最後の焦点。
ゆれる光の「絵合せ」 楽しみになさって下さいね。
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