星空に紫の織女 紡ぐことのは

 第二十一帖乙女の巻の語り会が無事に終了しました。
キッド・アイラック・アート・ホールでの五十四帖連続語り会もこの八月で四年目に入りました。
耳を傾けて下さる方々、支えて下さる方々のお力と励ましのお心がなかったら
とうてい続けてこられなかったと思います。

長い巻でした。三十分の解説 前半後半ともに一時間、ほぼ三時間の長い時間おつき合いいただきました。
大和魂」という戦時下に於いて国の都合良く使われた言葉は、源氏物語のこの巻に初出し、
自らの思考判断で行動してゆく実質的な能力を意味しています。
養女梅壺を中宮に押し上げ、冷泉帝の後宮を掌握し太政大臣となってから、大将に内大臣の位を譲るという、
以前昇格の思し召しを受けることなく、一度は退いた左大臣を復活までさせたのは
この機が熟するのを待ってのことだったと気づかされます。
着実に足場を固め揺るぎのない地位について行くためにはタイミングも肝心・・・
これが源氏流の大和魂の実践なのかしらと思わされます。

朱雀の御代から冷泉の御代へと敗者勝者をさりげなくかつあざやかにみせてゆき
源氏の息子夕霧の青春の苦悩を軸に息子という第三者の目からも人間源氏が描かれ
これだけ複雑になった人間関係をさらりさらりと織り上げてゆく紫式部は単にコマを動かしていくだけでなく、登場人物のそれぞれの性質を有機的に紡ぎながらそこに光を与えたり影をさしたり実に見事・・・。
前回の朝顔の巻はこれぞもののあはれ というあはひの結晶したような巻だったけれど
今回は幼い恋はじめ現実的な話が延々続くなか登場人物の多さも半端ではなかったので、多すぎる食材のごった煮にならないようにと調理に苦心しました。

今回は私が18歳の頃この道に入るきっかけを作って下さった方が聴きに来て下さいました。ご自身も舞台の道で休み無く役者を続けてこられました。
また随分昔、まだ踊りを人前で踊っていた頃に御目にかかった方が20年ぶりくらいに来て下さって再会しました。素晴らしいお仕事をなさっていて、時が経つということの豊かさを感じました。
その時どきには混沌として見えるうつろってゆくものの正体が、時経て振り返ってみてみるとくっきりと示されているのを観たような気がしました。
そして毎回のように聴いてくださっていて、体調を崩してこの一年ほどみえなかった方がまた来て下さってとても嬉しく、この渦の中で人の健康も自分の健康も同じものなんだとその有り難みをつくづく感じました。

おもしろいことに本番前にはかならずなにか心が動揺するようなことが起こるのですが
今回は携帯をなくしました。心配でしたが会の前夜には諦めて滅却!

語り会が終わった夜は流星群で空は祈りに満ちたことでしょう。
明けた朝の空の色は格別に美しくて、本当に気持ちが晴れ晴れしていました。
よし!別の携帯会社で一新!と機種もあらかじめ決めてから契約しているshopに手続に行くと・・・届け出があったらしいとの情報!その足で警察署まで取りに行き9日ぶりに再会。
朝の気持ちよさが出来事にまで光をくれたような気持ち。
心の持ちようはそこから始まる総てのことのベースになっているようです。