心つつんで


成人の日の今日は爆弾低気圧で各地に大雪。
大荒れの船出は日本を象徴しているよう。

本年もよろしくお願い致します。

初詣に中井先生から戴いた、鼠地に山桜を染め抜いた着物を着ました。
北欧に講演に行かれたときに誂えられた着物。
中井先生は山桜の背景を染めるのに数ある鼠からどの色を希望なさったのでしょう。
色の辞典にみる鼠色は本当に多彩ですね。

 薄雲鼠・・・うすぐもねず。これだ・・・!

中井先生の風流振りに にんまり。

きものを着るとき それは私にとってちょっと特別な時間です。
おかいこさんの命をもらって紡ぎだした糸で
新たな命を授かった きものや帯や襦袢。
襦袢の下前をあわせて 上前をあわせて
直線に仕立てられたそれを曲線の身体にまとうのは
右手と左手で8の字を書くような動作。
紐を結ぶ動作も手が8の字を描きます。
その上にきものをかさねてまた8の字を描くように身を包んで
また紐を結んで。
心の臓を守るように、背中よりもおなか側を温めるように
身体の正中線を意識しつつ
永遠を表す∞の字をかさねながら身体を大切に包んでゆくのです。
帯を締めて帯締めを結ぶと
なんだかきれいに包装してのしをかけて水引を結んだ贈り物みたい。
いってきまあす。

さっくりさっくり
草履を履いて贈り物が歩いてゆく。
手土産はないけれど、この気持ち受け取ってね。

きものは包まれる人がまるで繭のおかいこさんに還ってゆくように身体をつつむ、閉じた装い。
外に繋がるところは、首、手、身八つ口、そして足元の裾。
ここから魔が入らないように、紅絹(もみ)を下にかさねたり
乱れないようにいつも気をつけるところから美しい仕草もうまれます。

久遠に続く∞の所作で
身を包むことをかさねてゆくという過程において感じる身体的な感覚
それが心をつくってゆく、そのことが着物の本質なのかなあと感じます。
それは眠らせている日本人の感覚を呼び覚ますことにも
自分を、そして自然に礼を尽くそうとする心、人を大切にすることにも
繋がるように思います。

今年もきものを楽しみながら、こんなすてきな心の文化を育んでくれた
先人に思いをはせたいと思います。



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