あの山の向こう 生の彼岸に



「常夏」「篝火」の語り会が無事終わりました。
ちょうど五十四帖の折り返しの帖が夏至の日とかさなって
この四年間を少し振り返ってみました。

中井和子先生が遺して下さった美しい京ことばによる源氏物語
一語残らず声にしようと 無謀にもはじめたこの企画。
第一回目、八月八日の暑い日
想像以上に応援に駆けつけて下さったお客様を前に
嬉しいやらおそろしいやら、とにかくはじめてしまってから
夢のようにこの四年が過ぎました。

試行錯誤を繰り返しながら、すこしずつ変化して現在の「女房語り」に。
これでいいということはきっと永遠になく
またこれから変化し続けて行くのだと思います。
願わくばそれが進化であるように。

帖を進める毎に人間関係が複雑になってゆくので
相関図を大きく出力して(いただいて)それを見ながら解説をお聴きいただくようになりました。
また
和歌だけはそのまま語ってきたのですが、
ご要望があって、今年から和歌のあとに、さらりと訳を付け加えることにしたのです。
語りのリズムが崩れるのではと悩み、今も本当のところどうなのかと思っていますが、
大切な心を表現する和歌のところで、その心がわからないままに次に進んでしまうのは、
というご意見は、語りに心から耳を傾けて下さるかたのお言葉だと思え 踏切りました。

これら目に見えることの説明は簡単ですが、
語りそのものと自分との関わりについては ここでは言葉にしきれない思いがあります。
ただ、読むほどに、学ぶほどに、源氏物語が深く、広く、高く、膨大で
一生がもう一度あっても足りないような気になってきています。

時を経て、健康であれば源氏物語五十四帖を無事語りきることはできるでしょう。
はじめた頃はとにもかくにもそれが目標にありましたが
語るうちに源氏物語の豊かさが逆に私に語りかけてきました。
そしてあの三月十一日を境にもう一度、声にして語るということを考えはじめました。
自分に課した目標の その先にあるものをみつめ続けて
いにしえの物語を語りながらまさに今現在を生きてゆかねばと思います。

膨大な物語が発信してくるものを
否応なく生きることを求められるこの空の下で受けとめてつなげてゆこう 
いきものたちの命さざめく彼岸へ



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ことだまのくに








おおきに